‘コラム’
遺言書の存在を伝えていない
遺言書を作った事を相続人となるご家族に伝えていますか?
「遺言書を書いた」と安心している方もいらっしゃると思いますが、自らの遺志を遺言書に託しても相続人になる方々に遺言書の存在を伝えていなければ、せっかく作成した遺言書が有効に利用されず、必要な時に役に立ちません。
遺言書を相続人に見つけてもらわなければ、遺言書を書いたことが無駄になってしまいますし、相続の方法や手続が遺言作成者の遺志と違ったものになってしまいます。
◇自筆証書遺言の場合
ご自身で遺言書を作成した後に、ご自宅のタンスや机の引き出し、金庫や仏壇などに大切にしまい込んでしまうケースがあります。
また、銀行の貸金庫や税理士、弁護士、司法書士や遺言執行者又は親友などに預ける方もいます。
第三者に預ける際は、相続人と第三者が連絡がとれる状況を作っておかなくてはいけません。
仮に遺言書の控えが見つかっても、原本が無ければ遺言の内容は実現できません。
また、預けた相手が先に亡くなる可能性もあります。
「相続手続が完了した後に遺言書が発見された」というケースも実際にあります。
遺言書の預け先(保管先)には注意が必要です。
◇公正証書遺言の場合
遺言書は公証役場で原本が保管されますので、紛失しても再発行してもらうことができ、安心です。
公証役場では遺言書の有無の調査もできます。
遺言書が有るはずなのに見当たらない。
相続人の内の誰かが破り捨てたのでは?と相続人同士が疑いをもつような事も無くなります。
ご自身の遺志を相続してもらう為、相続人の負担を減らす為にも「遺言書を作成したこと」「遺言書の保管場所のこと」を相続人へ伝える事をお勧めします。
遺言書の作成に関しご相談をご希望の方は「お電話」又は当サイトの「お問い合わせフォーム」からご予約ください。
遺言書どおりに相続されない!
遺言書を作成された方の中には、「遺言書を作ったのでその通リ相続してもらえる」と安心していらっしゃる方が多いのではないかと思いますが、本当にそうでしょうか?
遺言書は法定相続分より優先されますので、遺言書を作成していた場合、遺言書の記載に基づき財産を相続されるとされています。
しかし、実際はそうでは無い場合もあります。
ご存じない方も多いと思いますが、遺言書に記載のある財産を相続する人が法定相続人のケース(最も多い例です)は、法定相続人全員の合意があれば、遺言者が作成した遺言の内容と異なった分け方でも相続する事ができます。
例えば、相続財産のうち、自宅は奥様へ、長女には株、二女には現金を相続させるという
内容の遺言書があったとしても、遺言書を作成された方が亡くなった後に、相続人がそれぞれ、奥様は現金、長女は自宅、二女は株を相続したいと思う事もあるかもしれません。
このような場合は、相続人の方たちは必ずしも遺言者が作成した遺言書に従う義務はないのです。
相続人同士が協議をした結果、全員の合意があれば相続人たちの希望通りに相続する事ができます。
遺言者の思いがあっても相続人たちの合意が優先されるということです。
ただし、相続人のうち全員が納得しなければ合意があったとは言えず、遺言書が優先されます。
◇財産を分ける4つの方法
1.遺言書による分割方法
遺言書に記載されている通りに相続する方法。
2.協議による分割方法
遺言書が無い場合に法定相続人全員で話し合いをし、分割方法を決める方法。
3.調停による分割方法
遺産分割の協議ができない場合や、まとまらなかったときに家庭裁判所に遺産分割の「調
停」を申し立て、裁判所で調停委員に間に入ってもらい相続人同士で話し合いをし、分割
方法を決める方法。
4.審判による分割方法
遺産分割の協議ができない場合や、まとまらなかったときに家庭裁判所に遺産分割の「審
判」を申し立て、裁判官が分割方法を決定する方法。
実際は1の遺言書が無い場合、2の方法で財産分けをするケースが一般的です。
3・4の調停や審判は、遺産分割協議ができない場合やまとまらなかったときに裁判所に関与してもらい、分割方法を決める手続ですので、まずは相続人全員で話し合いをして決めるのが原則です。
相続人全員の遺産分割協議がまとまった場合、後日の紛争を避けるために遺産分割協議書を作成します。
その後、作成した遺産分割協議書を用いて、相続手続を行います。
遺言書の作成でご相談をご希望の方は当サイトの「お問い合わせフォーム」からご予約ください。
ご相談は司法書士が直接、対応させて頂きます。
遺産は誰がもらうの?
子供がいない夫婦の場合、夫が亡くなった際の遺産は誰が貰うのでしょうか?
「妻が貰う」と答える方がほとんどではないでしょうか。
妻ですから当然自分が全て貰えると思い込んでいる方も多いようです。
回答としては半分正解で半分は不正解です。
なぜなら、家族構成によっては夫の遺産を100%妻が貰えるわけではないからです。
子がいない夫婦の場合、配偶者以外にも相続権が発生します。
夫婦に子がいた場合は、法定相続人が配偶者と子なので分かりやすいですが、子がいない夫婦の場合は家族構成によって法定相続人が変わってきます。
妻にとっては夫が亡くなってから相続争いに発展してしまう可能性もあります。
民法には、財産を引き継ぐ法定相続人と優先順位、各相続人が相続する割合の法定相続分が定められています。
子がいない夫婦の5つの相続ケースを見てみましょう。
A 夫の親が健在:妻が3分の2、親が3分の1
B 夫の親がすでに死亡しており、兄弟姉妹がいる:妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
C 夫の親・兄弟姉妹がすでに死亡しており、甥・姪がいる:妻が4分の3、甥・姪が4分の1
D 夫の親・兄弟姉妹・甥・姪もすでに死亡:妻が全て相続
E 夫と前妻の間に子がいる:妻が2分の1、前妻の子が2分の1
以上のように妻(配偶者)は常に相続人になりますが、民法で定められている相続の順位は
第1順位は子、孫
第2順位は父母、祖父母
第3順位は兄弟姉妹
ですので、子がいない場合は第2順位からになります。
なお、夫と前妻の間に子がいる場合はその子は相続人になります。
また、第3順位は兄弟姉妹ですが兄弟姉妹がすでに亡くなっているとその子である甥・姪が代襲相続人になります。
法定相続分で遺産分割を行うと、夫婦で築いてきた財産を面識もないような甥や姪に渡さなくてはいけないのです。
この他にも、被相続人が亡くなった後に兄弟姉妹が亡くなった場合には、甥・姪だけでなく、兄弟姉妹の配偶者も相続人となる場合があり、さらに相続人が増え複雑になります。
そこで生前に遺言書を作成しておくと、相続割合を指定することができます。
法定相続分と異なる割合で相続したい場合、遺言書が無ければ、法定相続人が遺産分割協議を行う事になり、協議がまとまらなければ裁判所に調停を申し立てる事になる場合もあります。
相続のトラブルは財産の多い少ないに関わらず起きやすいです。
自分たちは大丈夫だと思っていても、自分の意に反した予想外の事が起きる場合があります。
私どもの事務所に手続のご相談にお越しになった方々の中には、相続人同士は仲が良いので大丈夫だと仰られていた方が、争族になって手続がスムーズにいかなくなった例もあります。
私どもは様々な事例や経験から相続トラブルを防ぎ、円満な相続にする為にも「公正証書遺言書」をお勧めしています。
公正証書遺言書の作成についてのご相談は「お電話」又は当サイトの「お問い合わせフォーム」からご予約ください。
亡くなった祖父の家を孫の名義にできますか?
不動産を所有していた方が亡くなった場合、不動産の名義変更をするには「相続」を原因とする所有権移転登記(相続登記)を行う事になります(死因贈与・遺贈による場合を除く)。
例えば、相続人の全員が合意しても、お亡くなりになった方(被相続人)の不動産を相続人以外の人へ「直接名義を移す」ことはできません。
まず、相続人の一人(単独名義)又は複数の相続人(共有名義)へ相続登記(所有権移転登記)を行った後に売買や贈与による所有権移転登記を行います。
ですから、タイトルの答えとしては、原則、祖父から法定相続人ではない孫へ直接名義を移すことはできません。
祖父名義の不動産を孫の名義にする場合は、相続登記をした後に、登記名義人となった相続人から生前贈与又は売買による所有権移転登記申請を行う事により名義を変更する事が可能です。
つまり、登記申請としては2件必要となります。
※贈与の場合は贈与税も考慮の上、判断されることをお勧めします。
先程、タイトルの答えとして、「原則、祖父から法定相続人ではない孫へ直接名義を移すことはできません」とお話しましたが、実は例外があります。
下記の2つの方法を使うと、祖父から法定相続人ではない孫へ直接、しかも1度の手続で名義変更をする事ができるのです。
◇遺言書がある場合
祖父の遺言書に孫へ対象の不動産を渡す内容がある場合は、直接、孫に不動産の名義を変更する事が可能です。
このように相続人以外の人に不動産を贈与することを「遺贈」と言います。
ただし、遺言の内容が有効な遺言書でなければ遺贈による登記を行う事はできません。
また、遺言書の中で遺言執行者を決めておくと、亡くなった後に遺言執行者と孫のみで名義変更手続ができるので、遺言執行者も併せて決めておくことをお勧めします。
◇死因贈与契約がある場合
祖父が生前に、祖父を贈与者、孫を受贈者として死因贈与契約を締結してある場合は、孫に対象の不動産の名義を移すことができます。
遺言書による場合と死因贈与契約による場合のいずれも、生前に行う必要がありますので、
確実に財産を渡したい方がいるのであれば、生前の相続対策は必要不可欠といえるでしょう。
◇不動産の名義変更(相続登記)の必要書類
・対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) ⇒法務局
・対象不動産の固定資産評価証明書 ⇒市区町村役場
・被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本 ⇒市区町村役場
・被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの)⇒市区町村役場
・相続人全員の現在の戸籍謄本 ⇒市区町村役場
・相続人全員の印鑑証明書 ⇒市区町村役場
・対象不動産を取得する相続人の住民票 ⇒市区町村役場
・遺産分割協議書 ⇒相続人又は司法書士が作成
*遺言書が有り、遺言通りに相続登記を行う場合には、必要書類が異なります。
これらの必要書類に関し相続登記の手続を司法書士に依頼する場合には、印鑑証明書以外は司法書士がすべて直接、職権で代理取得することが可能です。
◇相続登記に必要な費用
・登録免許税:固定資産税評価額の0.4%
固定資産税評価額については、毎年市区町村から送付される固定資産税の
課税明細書(納税通知書)に記載されていますのでご確認下さい。
・戸籍謄本、住民票などの取得費用の実費
・相続登記を司法書士依頼する場合の報酬
尚、当事務所は司法書士がご相談の内容を基に御見積書をご提示してから着手致しますのでご安心下さい。
ご相談をご希望の方は「お電話」又は当サイトの「お問い合わせフォーム」から面談日時をご予約ください。
財産が少ない人も遺言書は必要なの?
「遺言書」は財産がたっぷりある大金持ちの人が用意するものと思っている方が多いと思いますが、実際はサラリーマンの方で相続人は子供が2人、財産は自宅とわずかな預貯金で年金生活をしているような方も遺言書を用意されることをお勧めします。
財産をたくさんお持ちの方は、どの資産を誰に相続させようか頭を悩ますことがあります。
しかし、現実は財産が少ない方の相続人同士のトラブルも少なくありません。
例えば、相続人が兄弟2人の場合でお話しましょう。
長男は、転勤族で地方で生活しています。
二男夫婦は、父親名義の家に父の介護をしながら同居していましたが、父が亡くなり相続が開始しました。
遺言書はありませんでした。
財産は父親名義の自宅(土地・建物)とわずかな預貯金です。
相続人は兄弟2人
兄の主張:法定相続分通り財産(不動産・預貯金)を分けたい
弟の主張:父親の介護をしてきたので父親名義の家にそのまま住み続けたい。
父親名義の家(土地・建物)を弟が100%相続したい
預貯金は法定相続分通り2分の1に分けたい
このように兄弟の主張は違います。
兄の主張を優先するのであれば、まず不動産(父親名義の土地・建物)については、法定相続分通りの持分(2分の1ずつ)で相続登記を行います。ですが、兄としては不動産の持分を取得しても、そこに住むわけではないので、売却して売却代金を分けたいと言うでしょう。
売却する際も、まず相続登記を行ってから売買を原因とする所有権移転登記が必要となります。
ですが、弟としては今まで通り住み続けたいと主張しますので、相続登記をしても、売却に納得しない事が考えられます。
では次に弟の主張を優先するとどうでしょうか。
法定相続分と異なる割合で相続登記を行う為には、遺言書が無い場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、協議内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、相続人の兄弟2人の実印と印鑑証明書が必要になります。
当然、兄が納得しないと遺産分割協議書に実印を押印してもらう事も困難になります。
弟は、父の介護をしてきているので、寄与分が認められるケースもありますが、いずれにしても相続人として兄弟2人の合意が無ければ進みません。
このように相続人はそれぞれの生活があり、事情が異なります。
当事者の相続人同士が公平、平等に決めていく事は非常に難しい事です。
このようにな事を防ぐためには、親からの遺言書が有ると無いとでは状況が変わります。
遺言書が有れば、仲の良い兄弟が争う可能性は低くなるでしょう。
遺言書は資産の多い少ないに関わらず、残された家族へ自分の思いを伝えるメッセージとして作成されることをお勧めします。
そして遺言書が用意してあることを、子どもたち相続人に伝えておく事も大切です。
相続人同士のトラブルを未然に防ぐためにも、自筆証書遺言より公正証書遺言の作成をお勧めします。
故人が自筆証書遺言をのこしていた場合は、相続人同士が不仲で顔を合わせたくなくても、相続人全員で家庭裁判所に行き検認手続を行わなくてはいけません。
また、自筆証書遺言は1通しかありませんので、相続人同士が不仲で相続人の一人が保管していると他の相続人は見ることも、手続に使用することもできなくなります。
その点、公正証書遺言は日本全国の公証役場で閲覧や、謄本を交付してもらう事ができます。
先ほどのような不仲なケースでも手続を進める事ができます。
私どもの事務所では遺言書の文案を作成し、公証役場の公証人とスケジュール調整を行い
証人の手配をし公証役場に同行いたします。
安心してお任せください。
ご家族の為に「遺言書」を作成したい方はお気軽に「お電話」又は当サイトの「お問い合わせフォーム」からご予約ください。
戸籍謄本の原本還付
相続登記の申請を行う場合、戸籍謄本や印鑑証明書の原本を法務局へ提出しますが、登記が
完了した際に戸籍謄本や印鑑証明書の原本を還付する事が可能です。
しかし、相続税の申告の為に税務署に提出する戸籍謄本などは原本還付ができません。
先に相続税の申告を行うと戸籍謄本や印鑑証明書は各2通必要になりますが、
不動産の所有権移転登記(相続登記)が必要な場合は先に法務局で登記申請をした後に、
相続税の申告を行うようにすると戸籍謄本や印鑑証明書は各1通ずつで手続ができます。
相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。
【参考】国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
遺言書がある場合や遺産分割協議がまとまっているケースで相続税の申告前に登記をすることができるのであれば申告の前に登記を行う事をお勧めします。
◇税申告に戸籍謄本が必要な理由
相続税の申告には、亡くなった方(被相続人)と財産を受け取った相続人の関係を証明するために、
被相続人と相続人の戸籍謄本の添付が必要です。
◇コピーで対応が可能に
相続税の申告で税務署に戸籍謄本の原本を添付しますが、既に平成30年4月1日以降から
戸籍謄本のコピーの添付も認められるようになっています。
尚、従来通り原本を提出しても構いません。
【参考】国税庁ホームページ
http://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2017/pdf/h30kaisei.pdf
◇税務署の対応が統一
平成30年4月1日の施行前は税務署によって戸籍謄本の原本を添付する税務署と戸籍謄本のコピーで
対応してくれる税務署がありました。
申告の際に戸籍謄本のコピーを添付しても、後から原本の提出を求められることもありました。
コピーの添付が明確に認められたことで、税務署の対応の違いは無くなっているでしょう。
◇費用負担の軽減
相続税の申告に必要な戸籍関係書類として戸籍謄本のコピーの添付が認められることで、
これまで必要だった戸籍謄本の原本の数は1セット少なくなります。
通常、お亡くなりになった方(被相続人)の出生から死亡まで連続した戸籍謄本は「除籍謄本」や
「改製原戸籍謄本」等の古い戸籍謄本も含めて発行される為、通数が多いほど交付手数料が多くなります。
戸籍謄本のコピーの添付が認められた事で、原本を取り寄せる費用負担が軽減されます。
◇費用以外の負担
手数料の負担だけではなく、何度も役所に申請する手間も軽減されます。
また、相続税の申告には法定相続情報一覧図の写しの添付も認められ、戸籍関係書類の取得にかかわる
負担が軽減されています。
相続登記を行う場合、お忙しい方やお体が不自由で役所の開庁時間に戸籍謄本の取得が困難な方は
司法書士が代わりに取得致します。
法定相続情報一覧図の作成や戸籍謄本の取得についてお困りな方は「お電話」又は当サイトの「お問い合わせフォーム」からご予約ください。
借金も相続するの?
相続するということは、全てのプラスの財産に限らず、借金などのマイナスの財産も含まれます。
例えば、亡くなられた方が多額の借金をしていた場合、相続すると相続人は借金の返済をすることになります。
残された家族からすると借金が多いなら相続したくないということになります。
相続人は相続するかしないかを決めることができます。
相続にはプラスの財産もマイナスの財産も全て相続する「単純承認」という方法に対し、全部または一部を相続しないという方法もあります。
◇相続放棄
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も全て相続をしない方法です。
各相続人がそれぞれ放棄するかしないかを決めることができます。
手続の流れは
1.相続放棄申述書を被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に提出します。
【必要書類等】
- 申述人(放棄する人)の戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
- 相続人の認印
- 収入印紙800円(申述人1人につき)
- 返信用の郵便切手
2.約1週間程で家庭裁判所から相続放棄の申述についての照会書が郵送されます。
質問事項に回答し家庭裁判所に返送します。
3.相続放棄が受理されると、相続放棄申述受理通知書が家庭裁判所から郵送されます。
証明書が必要な場合は家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書の申請を行います。
◇限定承認
限定承認はプラスの財産を限度にマイナスの財産の負担を負うという方法です。
ただし、相続人全員の合意が必要です。一部の人だけが行う事はできません。
ですので、相続人の1人でも単純承認してしまうと、限定承認はできなくなってしまいます。
手続の流れは
1.被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に家事審判申立書を提出します。
【必要書類等】
- 被相続人の戸籍謄本(出生時から死亡時まで)
- 被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
- 申述人全員の戸籍謄本
- 相続財産目録
- 申述人全員の認印
- 収入印紙800円
- 返信用の郵便切手
2.家庭裁判所が相続人から相続財産管理人を選任します。(共同相続の場合)
3.相続財産管理人は、債権者などに選任審判の告知後10日以内に公告(官報掲載)しま
す。(共同相続の場合)
※相続人が1人のみの場合は、限定承認の申述の受理から5日以内に公告する必要が
あります。
4.公告(官報掲載)に定められた期間内に申し出をした債権者に相続財産の限度内で弁済
します。
5.債権者への弁済後に残余財産があれば、受遺者に弁済します。
以上のように、「相続放棄」や「限定承認」を行う場合は相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述を行います。
3か月以内に手続をしなければ「単純承認」したとみなされ、子供は借金も相続する事になり子供は親が作った借金を返済することになります。
限定承認をすると、準確定申告が必要となりますし、みなし譲渡所得税がかかる場合もありますので、利用する場合は注意が必要です。
親は子供達に借金などのマイナスの財産がどのくらいあるのかを事前に伝えておき、親が亡くなった際に借金が多く返済が困難な場合は3か月以内に相続放棄の手続を行うように親子で話をしておくことも将来の対策の一つになります。
「相続放棄」や「限定承認」は期限がある手続きになります。
戸籍などの収集は時間や手間がかかります。
司法書士のような専門家に依頼をすることでスムーズに手続が可能になります。
ご相談は「お電話」又は当サイトの「お問い合わせフォーム」からご予約ください。
不動産を共有名義にする場合の問題点
相続財産の不動産(土地・建物)を相続人のうちの一人の単独名義にするか、相続人全員の共有名義にするか、悩まれる方も多いと思います。
共有名義にした場合、どのような問題が起きるのでしょうか?
民法第249条には「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」と規定されています。
相続の場合には、それぞれの相続人は対象となる物を持分の価格に従い、全体を使用することができます。
ですが、相続財産に不動産がある場合、「不動産を共有名義にしない方が良い」とか「共有名義はお勧めしません。」などと言われることも多いです。
それはなぜでしょうか?
◇共有名義でも問題が無いケース
相続財産のほとんどが不動産で、相続人全員に平等に遺産分割ができない場合に、対象の不動産を売却し、売却代金から手続にかかった費用を引いた残金を持分に応じて分割するというケースがあります。
このように不動産を売却し得られた金額を持分で分割する方法を「換価分割」と言います。
もちろん、相続人全員が同意していることが前提です。
このようなケースは相続人全員が同意しているので、共有名義になっていても特に問題はありません。
◇共有名義の問題点
相続における不動産の共有名義は、下記のような問題が生じる可能性があります。
・共有者が増える
例えば、共有者が2人で相続財産の土地を2分の1ずつ共有しているケースで、共有者の一方が亡くなり相続が開始した場合には、共有持分が相続人の数だけ細分化する事になります。
そうなると、相続人が増えて権利関係が著しく複雑になってしまうという可能性があります。
また、不動産の共有者が増えると利害関係者も増える可能性もあり、不動産の活用や売却をするときに共有者の意見がまとまらずスムーズに行えなくなるという問題も発生します。
・不動産の活用が難しい
先程もお伝えしましたが、共有者が増えると、不動産の活用や売却する際に、共有者の意見がまとまらずスムーズに行えなくなることがあります。
不動産の売買では、司法書士が売主に直接お会いし本人確認をさせていただきますので、もし共有者の中に認知症などで意思表示をする事が困難な方がいらっしゃる場合には、売買ができないこともあります。
・遺産分割がまとまらない
共有名義を解消して単独名義にするためには共有者(所有者)全員で遺産分割協議を行う必要があります。
ところが、共有者全員の考えが同じであれば良いのですが、共有者のうち一名でも同意しない共有者がいる場合は単独名義にすることはできません。
- 共有状態を解消するには
共有名義の土地(不動産)を相続した場合に、相続人全員で協議がまとまらない場合は、民法第907条第2項に「遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。」とあります。
相続人の間で遺産分割がまとまらない場合には、弁護士などの専門家に依頼し、家庭裁判所に遺産分割調停の申立をすることもできます。
以上のように不動産を共有状態にする場合には、予想される問題点等を考慮した上で、行うことをお勧めします。
また、公正証書遺言などの遺言書を作成し、共有者(相続人)が争わないように将来を見据えた分割方法を考えることが大切です。
土地や建物の不動産に関する名義変更や遺言書の作成でお困りな方は「お電話」又は当サイトの「お問い合わせフォーム」からご予約ください。
相続登記を10年以上していません・・・
父が亡くなってから10年以上経ちますが、父が所有していた不動産の名義変更を行っていませんが大丈夫でしょうか?
というご相談がありました。
皆さんはどう思いますか?
相続登記はいつまでに行わなくてはいけないという義務や期限はありません。
放置をしても、処罰されたり罰金などもありません。
しかし、相続登記を行わないで放置した状態ではリスクがあります。
できるだけ早いうちに相続登記を行う事をお勧めします。
その理由としては
◇相続人が増えて複雑になる
相続登記をしない状態で相続人の内の一人が亡くなった場合、亡くなった方の相続人の協力が必要になります。
せっかく相続人の間で協議が済んでいた場合でも、次の相続人が同意しなければ相続登記ができない状態になります。
話し合い(遺産分割協議)も再度しなくてはいけなくなり、時間や精神的な負担もかかります。
◇勝手に不動産を売却される
不動産を所有していた方がお亡くなりになった場合、遺言書もなく、法定相続分と異なる割合で相続する場合は、遺産分割協議を行う事になります。
遺産分割協議がまとまるまでは、その不動産は一時的に相続人全員の共有状態となります。相続人の一人が、法定相続分に基づいた相続人全員の名義の相続登記を行う事もできますので、登記手続を行い、その相続人が持っている持分を第三者に売却することができてしまいます。
一般的に共有状態において、一人の持分のみを購入するということは買い手側にとっても考えにくいですが、何らかの理由で他の相続人に対し嫌がらせ的な気持ちで勝手に売却をすることもできてしまいます。
◇不動産を活用できない
亡くなった方(被相続人)の名義のままだと相続した不動産を売却したり、担保にして借金をすることができません。
相続登記をしていなければ第三者に対して、自身(相続人)の名義であることを証明する事ができません。
以上のように、相続登記をしないといくつかのデメリットがあります。
相続が発生した場合には、相続人の間で早めに遺産分けについて話し合いをし、不動産・預貯金・株式等それぞれの財産の名義変更手続をされる事をお勧めします。
ご相談をご希望される方は「お電話」又は当サイトの「お問い合わせフォーム」からご予約下さいませ。
相続分の譲渡
今回は相続分の譲渡についてお話します。
相続分の譲渡とは、相続人が遺産分割の前に自分の相続分を、他の相続人やその他の第三者に譲渡することをいいます。
相続財産を法定相続分割合で相続しない場合において、お亡くなりになった方(被相続人)の遺言書がなく、且つ相続人が複数いる場合は相続人全員で遺産分割の協議を行い、後で争わないように証拠として遺産分割協議書を作成します。
しかし、相続人の間で争いが生じて相続人全員の合意を得ることが難しい場合や、自身の相続する取り分が決まっているが特定の相続人とのトラブルを回避するために、他の相続人やその他の第三者に相続分(遺産全体に対する各共同相続人の法定相続の割合)を無償又は有償で譲渡する場合などがあります。
◇相続分の譲渡の方法
・遺産分割の前に行なわなければなりません。
・相続分の一部又は全部について行う事が可能です。
・書面でも口頭でもできます。(登記手続上は相続分譲渡証明書を作成します。)
◇相続分を譲渡する相手
・他の相続人やその他の第三者でも可能です。
◇対価について
・譲渡に関しては、対価をもらわずに譲渡(無償)でも対価をもらって譲渡(有償)のどちらでも可能です。
◇遺産分割について
相続分の譲渡を、他の相続人やその他の第三者に対して行った場合は、譲渡した分だけ相続分の割合が増加することになります。
その反面、譲渡した相続人の相続分は一部譲渡の場合は譲渡した分だけ減少しますし、全部譲渡の場合は消滅します。
全部譲渡した相続人は相続分が全て無くなるため、遺産分割協議に参加する必要はありません。
その他の第三者に対して相続分の譲渡が行われた場合は、遺産分割の協議を行う際、第三者である譲受人も遺産分割協議に参加する必要があります。
◇名義について
同一順位の共同相続人の間で相続分が譲渡された場合は、譲渡された後の共有持分の割合により、直接、相続による所有権移転登記を行うことができます。
お亡くなりになった方(被相続人)から、共同相続人以外の第三者への直接の移転登記をすることは認められておりませんので、まず共同相続人による相続登記を完了した後に、相続分の譲渡人から、譲受人への所有権(あるいは共有持分)の移転登記を行う点を注意してください。
このように相続分を譲渡する側からみると煩わしい相続から解放できるというメリットがあります。
また、譲渡を受ける側は相続人が減り、話し合い(協議)がまとまりやすくなるというメリットもあります。
私共の司法書士業務の中で相続分の譲渡を利用するケースは、相続人が遠方にいる場合や疎遠な相続人がいるケースや相続が長期化するような場合に比較的多く利用されます。
さらに、相続分譲渡は相続人ごとの個別対応がしやすいので遺産分割協議で相続人全員が合意し成立するよりメリットがあります。
しかし、相続に債務があると相続分譲渡を債権者に対抗できないことと、数次相続の場合は登記が複雑になりますのでご注意ください。
◇登記を行う為の必要書類
相続分の譲渡が行われた場合には、譲渡人の印鑑証明書が必要になります。
更に「相続分譲渡証明書」を作成し、通常の相続登記の必要書類に添付し申請します。
相続の譲渡に関し、ご相談をご希望の方は「お電話」又は当サイト内の「お問い合わせフォーム」にてご予約を行ってください。
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