遺言により不動産を遺贈された場合はどうするの?

A子さんと長い間、同居していた叔母さんが亡くなり、叔母さん名義の土地と建物を遺言により遺贈されました。

この土地と建物の名義をA子さんに変更するために手続が必要になりました。

 

このようなケースはどのような手続が必要となるでしょうか。

 

まず、遺言書の種類によって、必要となる手続が異なります。

遺言が公正証書遺言の場合は検認の必要はありませんが、自筆証書遺言の場合には家庭裁判所で検認手続を行う事になります。

 

自筆証書遺言の検認申立てを行う場合は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に遺言書検認申立書を提出します。

添付する書類としては

・遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本

・相続人全員の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)

などですが、相続関係によって書類が異なりますので、事前の確認が必要です。

 

*これらの謄本等は法定相続情報証明制度を利用する場合、法定相続情報一覧図の写しで代用できますが、裁判所へ確認が必要です。

 

遺言書の検認が終わったら、次は法務局での不動産の名義変更です。

不動産の名義変更を行う際に、誰が登記申請を行うのでしょうか?

 

それは、遺言執行者が選任されているかどうかで変わります。

 

まず、遺言執行者が選任されていない場合は、

受遺者(もらう方)と相続人全員との共同で申請し、遺贈を原因とする所有権移転登記申請を行います。

遺言執行者が選任されている場合は、受遺者と遺言執行者との共同で申請し、遺贈を原因とする所有権移転登記申請を行います。

 

遺言執行者が選任されていない場合には、相続人全員の協力が必要となりますので、遺言書を書く際にはその辺りにも注意する必要があります。

 

法務局には、次のような書類を提出します。

 

①遺言執行者が選任されていない場合の遺贈による所有権移転登記申請

登記申請書を作成します。

添付する書類としては

・登記済証又は登記識別情報

・登記原因証明情報(遺言書)

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本

・相続人全員の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)

・相続人全員の印鑑登録証明書

・受遺者の住民票の写し

・固定資産税評価証明書

 

上記を不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。

その際に不動産の固定資産評価額に1000分の20を乗じた額の登録免許税を納めます。

 

遺贈による効力発生日は遺贈者の死亡の日です。

 

登記申請は登記権利者である受遺者と登記義務者である遺贈者の登記義務の承継者たる相続人全員の共同で申請を行います。

遺贈者が所有権の登記を受けた後、住所や氏名が変更し、登記簿上の記載と一致していない場合には、遺贈による所有権移転登記を申請する前提として、遺贈者の住所または氏名の変更登記を申請する必要があります。

 

②遺言執行者が選任されている場合の遺贈による所有権移転登記申請

遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するとされていますので(民1012①)、遺言書に遺言執行者が定められている場合または家庭裁判所により遺言執行者が選任された場合には、遺言執行者と受遺者が共同で登記申請をします。この場合、登記義務者はあくまでも遺贈者であるため、申請書には遺言執行者の住所氏名は記載しません。

遺贈者の住所や氏名が登記簿上の記載と一致しない場合には、遺贈による所有権移転登記を申請する前提として遺贈者の住所または氏名の変更登記をする必要があります。

*①の相続人からの申請の場合と同様です。

 

添付する書類としては

・登記済証又は登記識別情報

・登記原因証明情報(遺言書)

・遺言執行者の印鑑登録証明書

・受遺者の住民票の写し

・固定資産税評価証明書

・家庭裁判所により遺言執行者が選択された場合はその審判書

 

以上が必要になります。

 

今回は、遺言により不動産を遺贈された場合の手続についてお話しました。

遺言書を書く際に、公正証書遺言が自筆証書遺言のどちらで遺言書を書くのか、遺言書で遺言執行者を決めるかどうか等に注意したり、遺贈の必要書類をあらかじめ遺言執行者や受遺者に伝えておいたりすると、不要な相続トラブルを未然に防ぐことができるかもしれません。

実際に遺贈された方だけでなく、これから遺言書を書こうと考えている方においても

参考になればと思います。

 

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