相続が発生した時にお亡くなりになった方(被相続人)が土地や建物などの不動産を所有していた場合に、その不動産の名義を相続人名義に変更する手続(相続による所有権移転)を一般的に「相続登記」といいます。
2人以上の相続人がいる場合で法定相続分と異なる割合で相続する場合は、遺産分割協議を行う必要がありますが、相続人が1人の場合はどうしたら良いのでしょうか。
今回は相続人が1人の場合の相続登記についてお話しします。
相続人が一人のケース
・夫婦の内どちらかが亡くなり、子及び亡くなった配偶者の両親や兄弟姉妹がいない場合は残された配偶者
・両親が亡くなり、子が一人の場合
・配偶者や子がなく、父母や祖父母の内1人が存命な場合、その1人が相続人
・配偶者や子、親がなく兄弟姉妹の内一人が存命な場合、その1人が相続人
このように、相続人が1人のケースはいくつかあります。
相続人が1人の場合は、法定相続人として財産を引き継ぎます。
相続人が1人であることを証明するためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得し、被相続人との関係を明らかにします。
相続登記
相続人が1人の場合は、法定相続による相続登記ができます。
他の相続人から合意を得ることは必要としないため、単独で登記申請ができます。
■遺産分割協議
相続人が2人以上いる場合に法定相続分と異なる割合で財産分けをするときは、遺産分割協議を行い遺産分割協議書を作成する必要がありますが、相続人が1人の場合は全ての遺産を引き継ぎますので遺産分割協議の必要はありません。
■被相続人の必要書類
・被相続人の出生から死亡までの連続した全ての戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)
・住民票の除票または戸籍の附票
※被相続人の最後の住所地と本籍地が異なる場合に必要となります。
■相続人の必要書類
・戸籍謄本
・住民票
※印鑑証明書が必要となるケースもあります。
相続放棄により相続人が1人になったケース
相続人が1人となるケースには、他の相続人が相続放棄したため1人になったというケースもあります。
相続放棄の申述が認められると、裁判所から相続放棄申述受理通知書が交付されます。
各種手続には、通知書とは別に「相続放棄申述受理証明書」が必要となります。「相続放棄申述受理証明書」は、裁判所に交付申請することで発行してもらえます。
相続登記をする場合、相続放棄受理証明書を法務局に提出する必要があります。
相続登記を先延ばしした為に相続人が1人になったケース
・家族構成:父、母、子(1人)
・財産:父名義の自宅(土地・建物)
このようなケースで、令和1年に父が亡くなり、父名義の不動産を相続する場合は、母と子の2人が相続人です。法定相続分は母と子それぞれ2分の1ずつです。
しかし、相続登記をせず放置していた結果、令和2年に母が亡くなり、相続人が子1人になりました。このような場合は、父から子への相続登記はできません。
まず、父から母と子にそれぞれ持分2分の1の共有名義とする所有権移転登記をします。その後に、母の持分である2分の1を子へ所有権移転登記をします。よって相続を原因とする所有権移転登記手続は2回必要となります。
このように、相続登記を先延ばしにしたり放置したりしていると、その間に当時の相続人が亡くなってしまう事があります。相続人が2人から1人になった結果、手間と費用が増えてしまうケースがありますので、早めに相続登記を行う事をお勧めします。
読み解く事が難しい「戸籍謄本の収集」や相続手続をスムーズに行うための「法定相続情報一覧図の写し」の作成など、相続の手続でお困りの方は司法書士におまかせください。
当事務所には、女性の相談者様も多くいらっしゃいます。男性司法書士に相談しづらい方や女性司法書士に相談したい方は「いちえ司法書士事務所」までご相談ください。
なお、当事務所でご相談やご依頼をお受けできるのは、相続人の間で協議がまとまっている場合に限ります。